キャリア

【事業会社のデータサイエンティスト】
 社員のAI、DX教育という仕事

はじめに

事業会社のデータサイエンティストの業務の1つに「社員の教育」があります。
この業務内容について紹介したいと思います。
これから、データサイエンティストを目指す方や転職を考えている方の参考になれば幸いです😀

マルチンゲール
「データサイエンティスト」と言っても、日本企業の場合、メンバーシップ型雇用であることが多いです😅
job descriptionにない、このような業務もあります。

3行まとめ

まとめ

  • データサイエンティストという職種で募集されているポストには、
    「社員のAI、DX教育」が含まれることがあるよ
  • AI、DX人材と呼ばれる人々が増えていきそうだけど、
    差別化ポイントはCRISP-DMの「ビジネスの理解」になりそう
  • 講師側であっても、学ぶことは色々あるよ

社員にAI、DX教育を実施する企業が増えている

世の中では、DXブームが吹き荒れています。製造業もその例に洩れません。
そんな中、企業がAI、DX人材の確保を目指して社員教育を行う例が増えています。また、企業向けの教育サービスを提供するベンダーも増えています。

表1:社員にAI、DX教育を行う企業 & ベンダー 一覧

企業 区分 概要 記事・サービス
ヤフー 社員教育 AI活用のオンラインプログラムを解説。間接部門社員も対象。 ヤフー、全社員を最先端IT人材に 8000人を再教育
中部電力 社員教育 2020年代後半に全ての従業員がITリテラシー教育を受講し、DX推進・キーパーソン要員数が600人超となることを目指す。 中部電力、2020年代後半にDX推進要員を600名に 全従業員にITリテラシー教育を実施
旭化成 社員教育 2023年までにグループの全4万人をデジタル人材に育成し、独自素材とデータ活用の組み合わせなどで新事業を立ち上る計画。 グループ全4万人をデジタル人材に、旭化成が推進するDX戦略のすべて
三井化学 社員教育 全メンバーでDXへ取り組むため、独自のDXリテラシー教育を構築し、全社でDX人材を育成 三井化学(株)のDX戦略
IHI 社員教育 AI/ データ分析技術(講義→自分の業務データで実技→試験で社内認定取得、という流れで実施。中途採用ではなく既存人材の育成をメ
インとする。
「社内人材のデジタル人材としての育成」
アイシン 社員教育 グループの国内すべての事技職(総合職)約1万4000人を対象に、AIの基礎知識を身に付けさせ、AIを活用して業務効率の改善や新領域の研究開発強化。 アイシンが国内全総合職1万4000人に「AI教育」の狙い
ダイハツ 社員教育 2020年12月より全スタッフ職を対象としたAI啓発研修を開始。AIに関する基礎知識を習得することで、各職場での普及を目指す。 ダイハツ、AI人材の教育プログラム開始 「AI道場」でAIエキスパート人材を養成 
三菱UFJ銀行 社員教育 「ビジネス」+ AIやデータアナリティクスなどの「テクノロジー」+顧客体験の「デザイン」を身に付たDXコア人材を育成 三菱UFJ銀行が全行員にDX教育、「コア人材」のスキルをどう定義したか
SMBCグループ 社員教育 デジタル教育コンテンツ(マインド、リテラシー、スキル)を全社員向けにE-learning配信。別途、全国の法人営業部門1500人を対象にワークショップを開催。
SMBCグループ、全従業員5万人にデジタル教育
エクサウィザーズ ベンダー DX推進人材コース、スペシャリストコースあり 法人向けDX人材育成サービス
SIGNATE ベンダー PBL(ケーススタディ形式)
週2時間×6カ月でモデリングの基礎を習得
法人向けSIGNATE Quest
Aidemy ベンダー リテラシー~専門的な内容まで、多数コースをラインナップ。ドメイン知識を活用したDXを提案。 Aidemy Business
TechAcademy ベンダー マネジメント、中堅、若手ごとにコースを用意。
e-learning とバーチャルクラスルームあり。
テックアカデミーDX研修

大きなビジネスが動いていますね((笑))

AI、DX人材の定義とは?

言葉の定義が曖昧過ぎるので、一応下記のように定義しておきます。
AIとDXということばが、既に曖昧ですが😅

AI人材とは

経済産業省発行の「AI人材育成の取組」から、該当箇所を抜粋すると以下のようになります。

  • AI等を使いこなして第4次産業革命に対応した新しいビジネスの担い手となる高度IT人材
  • AI等を使いこなし、新ビジネスを創造する新たな人材

少し解像度上がりましたかね(笑)

マルチンゲール
要は、人工知能を使って新しいビジネスを開拓していける人材ということですかね。ハードル高い!😅

DX人材とは

こちらも、経済産業省の資料を参照します。
デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(Ver1.0)」には次のような記載があります。

  • DX 推進部門におけるデジタル技術やデータ活用に精通した人材
  • 各事業部門において、業務内容に精通しつつ、デジタルで何ができるかを理解し、DX の取組をリードする人材

ちなみ、こちらの資料ではDX自体を以下のように定義しています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

マルチンゲール
デジタル技術を研究開発している人材や、ドメイン知識とデジタル技術を併せもち、業務プロセスを変革していく人材を指しそうです。

 

企業ごとの教育内容から、各社が求めている要件が見えてくるかもしれません。
曖昧さは残りますが、上記の定義を念頭に置いて、話を進めたいと思います。

教育形態

 

社員への教育形態には、大きく以下の3つがあると思われます。

① 内製
② 外注
③ 内製+外注

それぞれのパターンの概要、メリット、デメリットは以下のとおりです。ほとんどの会社は③のパターンを選んでいると思われます。

①、③のパターンでは、社内のAIエンジニアやデータサイエンティストがプログラム作成に参画することになります。そのため、本来業務(データ解析、AI実装)の調整が必要になることがあります。組織を強くする仕事は必要なので、仕方ないですね。

 

マルチンゲール
AIのアルゴリズムやPythonを学んだだけでは、業務フローを改善できないです。業態や業務フローに即したプログラムで教育する必要があります。なので、100%外注というのは難しそうです。

 

図1:教育方法のパターン

    教育の流れ

    ③のパターンを前提に教育の流れを4つのステップで説明します。
    (※あくまで、想定されるモデルケースの1例です)

     

    1.基礎知識をインプット
    SQCの基本的な考えや、機械学習とはなんぞや?といった基礎のカリキュラムを作成し、E-learning教材などに落とし込みます。

    マルチンゲール
    メーカーで働く限り、事務職であってもSQCの基礎くらいは知っておいて損はないかと。

     

    2.社内事例をモデルケースにAI活用のポイントを伝える
    取り組みを促進するために、社内でAIを活用し、業務改善した例をモデルに、活用のポイントを教材に落とし込みます。この作業には、データサイエンティストもかなりの工数を割く必要があります。
    資料作成や、関係部門での内容調整、部門長への承認取り付け、、etc。やることが沢山があります。

    マルチンゲール
    知識をインプットしただけでは、人は動きません。
    「自分にもできそう!」と思ってもらわないと。。

     

    3.アフターフォロー
    講座に関する質問を受付け、回答します。

     

    4.各職職場でトライ!
    講座の内容を各職場に持ち帰っていただき、デジタルを使った業務改善に取り組んでいただきます。

    マルチンゲール
    当然壁にぶち当たります。なので、困りごと相談室を設けて、対応します。

    図2:DX、AI教育用コンテンツ作成の流れ(※DS:データサイエンティスト)

     

    以上、企業によって、取り組みは様々だと思いますが、③のパターンだとだいたいこの流れではないでしょうか。

    マルチンゲール
    やや、話がずれますが、
    教育の費用対効果試算も悩ましい仕事。。

    この仕事から得られるもの

     

    データサイエンティストとしては、正直、社員の教育という仕事は面白くありません。
    個人の興味、スキルアップと組織を強くする仕事が一致しないことも往々にしてありますね😅

    図3:色々な業務がありますよね

    会社は学校じゃないので、仕方ないですね。

    しかし、引き受けるからには何かを体得するように、考えを切り替えなければ損です
    そこで、私なりにこの業務を請負うメリットを考えてみました。

     

    <メリット1.> DX人材として何を差別化要素にすれば良いか分かる

    AI、DX教育という仕事は市民データサイエンティストを増やす活動に通じることと思っています。このような人々が増えてきた場合に、現在の「データサイエンティストという職種」の希少性は下がっていくと思われます。しかし、社員への教育という仕事を通じて、多くの方が苦しむポイントが見えてきました。その能力向上がキーになると思われます

     

    データ分析の標準的なフローCRISP-DMでのその点を説明します。
    (テーマによっては、CRISP-DMが上手くマッチしないこともあります)
    CRISP-DMは以下の6つのステップからなります。

     

    1.ビジネスの理解(要件定義)
    取り組みの目的、背景を整理、目標、効果等を明確化して、スケジュールに落とし込みます。またステークホルダーの合意を取り付けます。

     

    2.データの理解
    目標達成のためにどのようなデータが必要か?そのデータは取れているのか?取得が必要な場合、どのくらいのコストが見込まれるのか?等を検討します。必要なデータが揃っている場合は、探索的データ分析を行います。

     

    3.データの準備
    AIモデル作成のためにデータを連携したり、欠損を補完したり、標準化、外れ値除去を行います。
    データの連携は、データが色々なデータベースに散らばっている場合、大変骨の折れる作業になります。(ISA-95の「機能間の情報フロー」が連携できていれば、かなり効率化できると思われる)

     

    4.モデルの作成
    統計解析、機械学習手法を用いて、モデルを作成します。最近はAutoMLなど、ほぼノーコードで作成できるサービスも使えます。

     

    5.評価
    作成したモデルのアプトプットが、1で決めた目標を達成できるか否か確認します。
    目標値に達していなければ、1.「ビジネスモデルの理解(要件定義)」に戻ります。

     

    6.展開・共有
    5で目標達成可能と判断されたら、業務フローに組み込み運用します。現場に実装するシステムの開発が必要であればこのフェーズで行います。技術を標準化して、全社に展開する取り組みもここに含まれます。

     

    さて、躓く人が最も多かったのはどのフェーズでしょうか?

     


    答えは、1.「ビジネスモデルの理解(要件定義)」のフェーズになります
    スタート地点であるこの工程は最も大切な工程になります。ここがずれているとその後の工数がほぼ無駄になります。そして、この工程はしばらく自動化できない工程だと思われます。この部分の能力を伸ばしていくことが、AI、DX人材でも最重要になりそうだと感じています。

    図4:CRISP-DMと躓きやすい箇所

     

    <メリット2.> 社内に顔が売れるので、引き合いが増える
    講師を担当すると、「こういうことがやってみたい!」と色々な職場から相談が舞い込みます。そして、面白い仕事を引ける確率が高まります。

     

    <メリット3.>  前提知識がない人が何に躓くか理解できるようになる
    自分が当たり前に前提条件として話していることが、受講者には当たり前でないことに気付かされることがあります。その瞬間は、戸惑いますが、後で咀嚼してみると、「確かにゼロベースであの説明を聞くと、理解できないよな~」と気付きを得ることができました。

     

     

    <メリット4.> パワーポイント作成のスキルが上がる
    これも1つ上の事例と同じのなのです。作成したスライドが、自分ではよく知っている事柄なので理解できてしまうのですが、第三者(AIを良く知らない人)の目に晒されることで、分かり
    難くしている原因に気付くことができました。

     

    最後に

    データサイエンティストというとキラキラしたイメージがあるかもしれませんが、こういった仕事もあります。どのような業務でも学ぶことはあります。しかし、データ解析、AI実装に特化したい!という方は、入社前に業務範囲を十分確認しておくと良いでしょう

    参考資料

     

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